日本食レストラン

海外でどんどん進化する日本食

今回は、ヨーロッパで生まれて発展した日本食レストランをご紹介します。

寿司、刺身以外での日本食店wagamama UK

1990年頃までのヨーロッパでは、日本食レストランと言えば日本人経営しかなかったと思います。(当時、筆者は英国在住)日本はバブル絶頂期の頃でした。日本料理店はどこも、高級料理店のイメージでした。お客さんの多くは日本人観光客や日本人駐在員とその家族と言ったところでした。はっきり覚えていますが、1990年ロンドンの某日本食レストランにてすき焼き定食が1万円してました。(一人用のすき焼き定食です。)牛丼は4000円。それでも当時、そのレストランを始め、他の日本食レストランも何時も日本人客で一杯でした。その後、日本経済のバブルは破裂してそれらの日本企業経営の日本食レストランの多くが撤退又は、閉鎖となりました。その後、出てきたのが日本人以外の経営に依る日本食レストランです。

WAGAMAMA FACEBOOKより
wagamama by ubereatsより

そんな中で1992年ロンドンでWAGAMAMAがオープンされました。(wagamamaは日本語でselfishと言う意味。自由気まま)香港出身者に依って創業。それまでの日本食レストランは、内装も日本一色と言うところが多かったのですが、WAGAMAMAは、洋風な作りの中に和風を感じさせるスタイリッシュな全く新しい感覚の日本食レストランでした。大ヒットで連日、日本人だけでなく、ロンドン在住のアジア系、そして欧州系のお客も来店していました。

価格帯は今でこそ安くは感じませんが、前著した様に1992年頃は、日本食=超高級=非常に高い、が当たり前でしたので、それと比較するとリーズナブルにそしてお洒落な店内で日本食を味わえると言う事で大ヒットしたんだと思います。今でこそ、日本のアニメブームで日本食はかなり浸透しており認知されているわけですが、当時は、ポピュラーではありませんでした。wagamamaの新しいコンセプトがお洒落な街、ロンドンにあっていたんだと思います。

2022年現在では、世界に150店舗以上あるそうです。英国中心でヨーロッパが多く、そして、北米と中東ドバイ辺りまである様です。料理は、ラーメン、丼物、鉄板焼き(焼きそば、焼うどんの類です。)、カレー類等とバラエティーに富んでいます。見た目は、日本食と言うよりはアジアンエスニックと言う感じです。(一般の欧米人は寿司、刺身以外の日本食を殆ど知りませんでした。)このところ英国では、カツカレーブームがありますが、豚カツではなく、チキンカツ又は野菜のフライです。宗教上の理由から豚肉を避ける人達がいるのと、欧米人は一般的には、豚の脂身は避ける傾向にあります。)、メニューの名前も日本語を多く使用しています。味は、個人の好みとなりますが、日本人にはあわないと思います。(何度か食べた事はあります。ミラノの空港内にもあります。)

日本食とは大分異なるのに何故、日本食イメージを強く出しているのか?一つには、日本食は高級感のイメージがあるからだと思います。欧州では一般的に中華やアジアンエスニックは安いところが多いです。(本格的な中華等は高級ですが)

余談になりますが、1990年初頭、良く香港へ仕事へ行きました。当時は、香港には多くの日本食レストランが既にありましたが、その中でもkowloonの三越内にあった日本食レストランは何時も人気で香港人で一杯でした。当時、海外にある日本食レストランと言えば大体が寿司、刺身が中心だったのですが、そこは、日本の洋食、トンカツ、焼きそば、カツカレー、エビフライ、ハンバーグ等と言った、所謂、日本の洋食でした。wagamamaも寿司、刺身ではなく、カツカレー、焼きそばと言ったメニューが中心です。大分昔から香港人は日本食を良く理解されていたと思います。その事が切欠かどうかは定かではありませんが。

temakinho.comより

次にご紹介するのは、temakinho (日本語読みで”テマキニョ” =手巻き寿司。イタリア中心に欧州で店舗展開している大人気の手巻き寿司のお店です。

temakinho-Italy ブラジリアン寿司です。ブラジルで育った寿司と言われています。日本の寿司は、修行が大変厳しく一人前の寿司職人になるまでには、長い年月を要します。素材の見立てから米の研ぎ方から勉強するわけです。しかし、ブラジリアン寿司は、その様な事を一切かっ飛ばしての巻き寿司専門(握り寿司ではありません)。短期間で覚えられる寿司です。寿司の日本と海外の一番大きな違いは魚の鮮度と種類です。海外でお寿司を食べるとわかりますが、ネタは大体決まっています。サーモン、マグロ、エビ、イカ、タコ、白身1~2点、貝類1~2点、イクラ、トビコと言ったところです。(日本人経営や高級店は日本から輸入したり、地元の日系商社からウニ、アワビ、ウナギ等の高級食材があります。)つまり、ネタの種類が少ない。欧米人が特に好んで食べるのがサーモンです。従って、オーダーはサーモンに集中するわけですので、サーモンを使った手巻き寿司のメニューが多くあります。魚の種類が少ないので野菜やチーズ等と組み合わせたり、様々なソースを使ったりと工夫して進化してきたのがブラジリアン寿司です。作り方は、酢飯の上にネタ(魚屋や野菜)を乗せてソースを塗って巻き上げて丁度良い長さに切るだけです。色鮮やか綺麗に魅せるのが重要な点です。料理経験のある人なら数か月もあればバラエティー豊かに出来ます。

(海苔は外側に出ない様に裏巻にするケースが多いです。イタリア人は、海苔が表面に出ているのを食べるのを避けます。従って、海苔は内側になって見えない様にしています。)

寿司ネタが少ないところで工夫され進化した寿司です。魚の苦手な人でもソースなどで調和されているので気になりません。ブラジリアン寿司店でなくても、この手の手巻き寿司がイタリアでは大ヒットしています。

ブラジリアン寿司を意識している店は、店内もブラジルを意識した装飾となっています。これがイタリアでは大ヒットです。このtemakinhoはローマ、ミラノ等を中心にイタリア国内で店舗展開しています。

日本でもイタリアンは、日本で変化した日本風のイタリアンが中心ですね。そして、本格的なイタリアンも都心だけではなく地方にも増えてきました。それと同じようにイタリアでも前著した日本食が中心でしたが、本格的な日本食レストランも都心に増えそして、郊外にまで出店される様になっています。

イタリアの日本食レストランと和食レストラン

All You Can Eat 食べ放題

*記載された価格(€、円)は記載した当時のレートや物価に基づいたものです。

イタリアのミラノ、ローマ、トリノの様な大都市や観光に人気のフィレンツェ、ベニスには日本人経営に依る和食レストランがあります。

それこそ、小さな街でも”日本食レストラン”があります。

”和食レストラン”と”日本食レストラン”を区別したのは、ここでは”和食レストラン”は日本人経営とし、”日本食レストラン”は外国人経営とします。(日本では一般的に和食と言うと”純日本食”つまり、懐石とかそう言った類になりますが、ここではこの様に区別させて頂きます。)(従って、ラーメン店等も日本人経営の場合は、ここでは和食レストランとします。)

余談ですが、日本政府主導で”和食”を世界に広げると言うのがあります。日本製の素材を使用した食事を海外で提供する事を奨励しています。日本製食材を多く使用している店舗では”和食?”マークのステッカーを頂けます。(一般の人には馴染みがないので例えそれが店舗に貼られていても気が付かないと思います。)2013年に”和食”はユネスコの無形文化遺産に登録されています。日本人経営かどうか?それには関係ありません。

ミラノにも500店舗以上の”日本食レストラン”があります。しかし、和食レストラン(日本人経営)は20店舗程度だと思われます。正確な数字はわかりませんが、大体、70%が中国人経営、20%がイタリア人経営、その他10%の中に日本人及び日系企業経営と他の外国人経営と言ったところです。

先ずは、日本食レストラン(日系以外の経営)。これが圧倒的な割合なわけです。

中国人経営の寿司店の中には”All You Can Eat”と言うのがあります。これは食べ放題です。昼と夜があって、昼の相場は12€(1,500円)、夜は25€(3,125円)(地域に依って多少価格の差があります。為替は変化します。)寿司以外でも天ぷら、とんかつ、蕎麦、うどん、拉麺等の日本食、それと中華料理と豊富なメニューがあります。ドリンク代は別になります。昼と夜の違いは、寿司メニューのレパートリー。昼メニューは限定的です。それでも、食べ放題なのでお腹いっぱいにはなります。

All You Can Eat以外の日本食レストランは、所謂、”フュージョン寿司”と言った感じが多いです。イタリア人はフュージョン寿司が大好きです。裏巻き(海苔が苦手です)やネタの上にネタを重ねるスタイルが好まれます。(サーモン巻きの上にイクラやトビコ)醤油も大好きですが、各フュージョン寿司には味がついている又は、タレがかかっています。照り焼き、ウナギのタレ、マヨネーズをアレンジしたタレ等、タレのバージョンが多いです。ミラネーゼはこの和風アレンジのタレが大好きです。従って、ネタの種類が少ないですが、タレとネタを組み合わせることで多くのメニューが出来ます。そして、店内は非常にお洒落に作られています。”お洒落なお店でフュージョン寿司”これがミラノでは大人気です。中にはミシュランの星を獲得したところもあります。

日本の様にネタの数が豊富ではない、と言うか、食べ放題で安さを売りにしているところは、サーモン、マグロ(赤身のみ)、エビ、イカ、タコ、スズキ、いくら、と言った程度のネタだけです。そして、アラカルトで出すところは、加えてウナギ、ウニ、アマエビ辺りがあります。それにしても、全部で10種類弱しかありません。日本の寿司屋だと、店に行って席についてから、”うーん、何にしようかな”ってな感じでメニューを見ながら考えたり、職人の方から”今日は、ヒラメがいいよ”なんて言葉があったりしますが、イタリアではそう言った光景は全くありません。(高級店や日本人経営の和食店はネタの種類がもう少しあります)全部で10種類弱のネタですから選び様がないと言った感じです。

で、味はどうなのか?フュージョン寿司は、高級店以外では、ネタの味と言うよりもタレの味で食べると言う感じですね。ネタの質がサーモン以外は悪い(米も悪い)のでネタの魚を味わうと言うよりもタレで一緒に食べると言う感じです。(中レベル以下のレストラン)高級店になると流石に和食レストランにも劣らぬネタを使用している為に美味しいですし、高級店は熟練の日本人職人もいます。しかし、値段はかなり高めです。

寿司屋以外の日本食専門店としては、ラーメン屋が人気です。ミラノも5年前位からラーメン屋が増えました。こちらもやはり中国人経営のラーメン(もどき)専門店が多いです。ラーメン専門店は、20店舗位だと思います。(All You Can Eatでもラーメン(もどき)がある店も、しかし、イタリア人はラーメンは専門店で食べます)ラーメン専門店でのラーメンの値段は、10€~15€が一般的です。(1,250円~1,875円)夜間は飲み物とコぺルト(サービス料の様なもの)が加わるので平均20€(2,500円)以上です。ラーメン屋でラーメンと飲み物だけで2,500円って日本では”ぼったくり”に近い値段ですが、イタリアではこれが普通です。イタリアでのラーメンは日本の様なファーストフード的なイメージではなく、一つのディナーなのです。

最も人気があるのは、日本人経営の和食レストランと高級日本食レストラン(高級フュージョン)です。本格的な日本の味や感度を味わいたい、又は、お洒落さも料理もトレンディな(フュージョン寿司)お店で食事をしたい、そんな傾向となっています。

次回は、和食レストランと高級日本食レストランの話を。。。。。